『100.000年後の安全』感想
『100.000年後の安全』は日本の福島原発の事故が起きる前に作られた映画だ。FUKUSHIMA以後、日本も含め諸外国でも原発に対する不安が一気に現実のものと化してその賛否が改めて論じられるようになった。多分FKUSHIMA以前に観ていたらまだまだ遠い国の話として他人事のように感じていただろう。せいぜい六ヶ所村のことを連想する程度だったろう。でもFUKUSHIMAを経た今、これはどうしようもなく我々自身の問題であり、避けては通れない問題であることを痛切に感じた。
今後原発をどうするかはその国の民意や政治経済etcの問題だが、現実問題として現在地球上には400基以上の原発が存在し、更に計画中のものが50基以上ある。そして原発を動かせば必然的に使用済み核燃料=高レベル放射性廃棄物が出る。(ちなみに日本では使用済み核燃料を再処理することを前提としているので高レベル放射性廃棄物 = ガラス固化体をさす。)
◆高レベル放射性廃棄物に関する基礎知識http://www2.gol.com/users/amsmith/whatsHLW.html
この映画はその高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)を地中深く10万年間保管しようとするフィンランドのオルキルオト島に建設中の最終処分場(別名オンカロ:隠された場所)に潜入したドキュメンタリーだ。
驚くべきことに世界中にこれだけの原発が存在しながら、最終処分場を持つ(まだ建設中だが)国はフィンランドだけらしい。そのフィンランドに原発は4基。日本は50基以上の原発を有しながら大部分の使用済み核燃料は国内で再処理できず(海外に委託)、原子力発電所内にある貯蔵プールに保管されたままになっている。原発作るだけ作ってそこから出るゴミのことは全く考えられていない、というかその処分のシステムさえ確立されていないというのが世界のスタンダードらしい。
と、まあ愚痴は置いておいて、この『100.000年後の安全』はタイトルが示すように、安全になるまで10万年を要するという高レベル放射性廃棄物を本当に10万年間も安全に管理できるのか?“10万年後の安全”を保証できるのか?自然災害・戦争・経済破綻etcでこの場所が将来どうなるか誰も分からない。また、ここが途中で掘り起こされたりしないのか?掘り起こされない為に、ここが危険な場所であり、これが危険な物質であることをその時の人類(?)に伝えることは可能なのか?等々深刻で深遠な問題を提起してる。
映画はオンカロの建設に関わる人のインタビューや建設現場の様子を淡々と映す。静かに深く。その問いかけと静謐な映像は,例えば『月に囚われた男』のようなSF映画を連想させたりもする。ツイッターでも呟いたがクラフトワークの曲(RadioActivity)が使われてたりもする。
原発に関してはまだまだ賛否はあるが、これは賛否を超えた現実の問題として現在と未来の人類(及び生命体)の為に対処しなければいけない問題なのだ。
個人的には、これ程までに厄介な原発を、果たして本当に人類は必要としているのか?と思う。少なくとも原子力を制御できる程の技術も知性も現在の人間はまだ有していない。決定的な手遅れになる前に手を引いて別の道を探るべきだと思う。
◆『100.000年後の安全』公式サイトhttp://www.uplink.co.jp/100000/
Twitterやってる方は #10mannen_mita で映画を観た人の感想を読むことができます。
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