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2007.04.14

『ブラックブック』感想

Blackbook2面白い。これぞ映画的興奮と刺激に満ちた作品。バーホーベンヴァーホーベン)監督構想20年だけあって、きっちり練り上げられた脚本は細かな伏線もエロ・グロもきっちり盛り込まれ見応え十分。

主人公のエリスを演じたカリス・ファン・ハウテンがまた素晴らしい。キリっと芯の強いしたたかでたくましい女を演じながら、終盤、耐えきれず号泣するシーンは思わず胸をえぐられる。

監督が言うように全ては「白でもなく黒でもないグレー」。人間の欲望の前には戦争という大義も矮小な経済装置に成り果て、金と恐怖と差別が人の心を弄ぶ。正義も悪も物事の裏表でしかない。そもそも戦争自体が人間の欲望が生み出したものだから、戦時下ではその本性がいかんなく発揮されることとなる。

冒頭とラストが1956年10月のイスラエルのキブツになっている点も注意。そう、悲しみに終わりはないのだ。

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『ロッキー・ザ・ファイナル』(試写会)感想

Rockythefinal2いや〜、何とも言えませんなぁ。もうここまでやられたらコメントのしようがないです。

これはもうロッキー・バルボアというボクサーの偉人物語り。誰もが知ってて安心して子どもに語り継ぐおとぎ話。説教と教訓とに満ちた伝説。しかし既に伝説になっているものを再び語る必要がどこにあるのかは大いに疑問。昔を懐かしみ、ぐだぐだしてるだけの前半は退屈の極み。だったら全面的に過去の作品を編集して流した方がよっぽど面白い。
しかもロッキーはエイドリアンを亡くしたものの、レストランのオーナーで息子もりっぱな社会人。客に昔の試合の様子を語って聞かせてる悠々自適の生活。ハングリーのハの字もない生活。リングに復帰したいのは構わないけど、チャンピオンと闘う必然性は全くない。すべては説教とネバーギブアップを聞かせるための必要上の進行。まあロッキー教を信望する人には大切な儀式なのかもしれないが、映画的興奮や驚きはどこにも無い。

試合の為の特訓から試合までの流れも絵に描いたような安心安全設計。全く説得力・リアリティを必要としない(求めてはいけな!)ファンタジー。そおいう映画として観ればKO。血湧き肉踊るような何かを期待したりしているとKOされます。

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2007.04.08

『絶対の愛』感想

Zettailove2韓国は整形大国らしい。世界各国からの韓国整形ツアーなんていうのもあるらしい。そんな事情がこの
作品の背景にあるということを念頭に置いて。

「恋人はもう自分のことに飽きてきたのではないだろうか?」「自分より美しい(かっこいい)女性(男性)に心変わりするんじゃないか?」誰でも抱く疑念だろう。では永遠の愛を得るにはどうしたらいいのか?その一つの回答がここにある。

何故キム・ギドクの映画は人を惹き付けるのか?自身でも「主題と脚本に一番時間を掛ける」と言っているように、まず、その主題の明確さと無駄を省いた脚本が観る側に力強い印象を与える。主題がブレずに、主人公たちがそこに向かってまっしぐらに進んでいくさまが、こちらに激しい動揺と、時に深い感銘を与えるのだ。それを”愛”と呼ぶにはあまりにもいびつなカタチだが、我々の心に潜む欲望の一つのカタチであることに間違いはない。
今回の『絶対の愛』でも、誰の心にも芽生える不安に”整形”という回答を出した女が、男ともども出口のない迷宮に迷い込むさまをスリリングに描き出す。そしてホラーなエンディング。

独特のロケーションもキム・ギドクの魅力。今回は彫刻公園。撮影の為にわざわざ作ったのかとも思ったが、実際にある場所らしい。

今回のパンフレットは『絶対の愛』公開記念の特集【スーパー・ギドク・マンダラ】に合わせて、「キム・ギドク監督レトロスペクティブ全作品カタログ」が一体化したものとなっている。で、中に韓国版?のポスターも収められているんだが、これがどれもいいんだなぁ。日本版の絵柄より全然いい。唯一『魚と寝る女』のみが同じデザインか。これは海外作品全般に言えることだが、ほとんどが本国版の方が断然かっこいい。何で日本版のはあんなにセンスがないんだろう。何とかしてほしい。そのまま使っちゃいけないとかの制限があるんだろうか?

余談ですが、主人公のハ・ジョンウ(『許されざるもの』にも出てた)の仕事が映画の編集みたいで、アップルのシネマディスプレイにFinal Cut Pro HDで編集中の画面が出てます。編集中の作品は『うつせみ』だったらしいです。これから観る方は注意して観てみて下さい。

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2007.04.07

『檸檬のころ』感想

Lemonnokoro2 正直、今時こんな純情で汚れなき物語などありはしないだろう、とは思いつつも、自慢じゃないけど俺も昔はこうだったなぁ〜などと感じる部分もあったりして頷いている自分もいたりする。不器用でぶきっちょな青春。だけど真っ直ぐ。スピリチュアルな点ではとてもいい作品だと思います。でも岩田ユキ監督も長編第一作目ということで演出がまだまだ不器用で真っ正直な感じ。贔屓目で見れば、その初々しさが内容とオーバーラップして好感が持てると言えるけど、次回からはそんな甘えは許されないでしょう。

柄本佑くんが相変わらずいい味出してます。石田法嗣くんと谷村美月ちゃんは『カナリア』組か。でも石田法嗣くん、今回はパッとしてなかったなぁ。一人で場面を暗くしてるだけだし。あれが演出だとしたらマズってるよね。それに比べて美月ちゃんは明るくエネルギッシュでよかった。『魍魎の匣』と『リアル鬼ごっこ』(こっちでは柄本くんのお父さんと共演ですか。原作は酷評ですが・・・)にも期待。榮倉奈々ちゃんは初めて。大地康夫がワンポイントでおいしい役をやってました。林直次郎くんは、まあ役者は初めてってことで。

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2007.04.04

『蟲師』感想

Mushishi2う〜ん・・・。原作の漫画はかなり前に読みました。でも、それほど面白いとは思わなかったので熱心に追いかけませんでした。4巻くらいまでですかね、読んだのは。深夜アニメの方はたまに見てました。

で、映画ですね。入念なロケハンをやっただけあって、雰囲気はありますね。でも一体全体何を言いたいのかさっぱり分かりませんでした。それは肝心の”蟲”のことがちゃんと描けてないからだと思いました。蟲と人間の関係や、何でその蟲がその人間に棲むようになったのか、とか。そこが漫画の面白さだったと思うのですがね。

映画はギンコや淡幽、その他のキャラの方に重点がいってて、彼らがやってることの中身というか意味がよく分からなくなってます。虹郎なんて何の為に出てきたか意味不明。大森君には罪はないのにねぇ。もっと言えばこの役はこの人でなくては!というのがなかった。他の誰かがやってもいいような撮り方(演出)。これだけのキャストを揃えてるのにもったいないもったいない。

出だしはまだよかったと思います。漫画でも1巻の二番目の話しですね。そこから一つずつエピソードを積み重ねていけばよかったんだと思います。変に時間軸をいじくったりしてギンコの生い立ちなんて入れるから、分かりにくくて冗長な印象になるんですよ。それとギンコがトコヤミに憑かれてしまったのに、そこから抜け出す過程が描かれてなくて、いつの間にかフツーに戻ってるのもヘンでしょ!脚本と構成とエピソードのチョイスが悪いってことか。

庄屋夫人役のりりぃとたま役の李麗仙がよかった。李麗仙と言えば状況劇場。大森南朋くんのお父さんは麿赤兒。麿赤兒も状況劇場に居たわけだから、大森南朋くんは子どもの頃からは李麗仙は知っていたのか?そうだとしても映画での共演は初めてではないかしら?二人の掛け合いのシーンは気が合ってたように思えたのは気のせいかしら。

*109シネマズ川崎の舞台挨拶(オダギリジョー&大森南朋)付きの回で観ました。さすがに満員。受付開始が9時半で開映が10時。オンライン予約の人が多かったらしく2台しかない発券機には長蛇の列。開映が20分押しました。チケットが完売してることは分かってるんだから、劇場側は500超の人間を効率よく入場させる算段を取っておくべきでしょう。ちなみにその時の舞台挨拶の様子は公式ブログにあるのでそちらを参照して下さい。

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2007.04.03

『善き人のためのソナタ』感想

Yokihito2_1アカデミー賞の外国語映画賞受賞作。今さら自分がいくら誉めてもあまり意味がないと思いますので、多くは語りません。観ていない人は観て損はないと思いますので是非どうぞ。にしても上映館が少な過ぎません?チネチッタもアカデミー賞を受賞したから上映してくれたんでしょ?(違ってたらゴメンなさい)

不満点をあげれば、主人公のヴィースラーが盗聴することによって変わっていく過程がいささか弱い気がすることでしょうか。冒頭、あれだけガチガチの体制側の人間だったのが、いかなる思い・影響によって変化していったのかを、もう少し丁寧に描いて欲しかったですね。

社会主義体制といっても一枚岩ではなく、中で権力を巡る醜い争いが繰り広げられていたことが、ソ連や中国ではあからさまであったけど、東独でも当然そうだったってことが新鮮でした。食堂でホーネッカーのギャグを言うシーンが面白かった。

え!?これもハリウッドでリメイクするんですか!!?ホント、もうやめてよね。

アカデミー最優秀外国語映画賞受賞作品「善き人のためのソナタ」、ハリウッドでリメイク - 米国(米国AFP BB News)

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2007.04.01

『ハッピーフィート』感想

Happyfeet2これほどハードな展開の作品だとは思いませんでした。ある程度の評判は聞いていたものの、ペンギンアニメだと甘く見てました。実際に動物園にはノイローゼになる動物は結構いるらしいし。とは言うもののやはり無垢な子どもも観ることを考慮してでしょうが、ハードなままのエンディングはむかえられなかったようです。かなり行くとこまで行ってくれましたが、そこから先は一転ハッピーな展開になります。ハッピーがいけないわけではなく、そのあまりの唐突な転調に唖然。そこにどおいう意思・狙いが隠されているのかは計りかねますが、捻くれた大人にはいささか拍子抜けでした。あと、個人的には「歌」と「踊り」は切っても切れない関係だと思うので、皇帝ペンギンを「歌」のみの存在とする設定には疑問をおぼえました。

ラテン系ペンギン5人組「ジ・アミーゴス」最高!彼らでスピンオフものを作って下さい。そう言えば『マダガスカル』でも4人組の「ペンギンズ」が最高に可笑しかったですね。スピンオフも作られましたし。

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『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(試写会)感想

Tokyotowerobto2原作本は未読。テレビドラマも未見。リリー・フランキーの他の本も読んだことがありません。

大変よくできた作品だと思います。(いい意味で)突出した演出もなく、主役から脇役までが絶妙のバランスで配置されてます。その中でもオカン役の樹木希林内田也哉子のほんわか感が作品の大きな魅力になっています(この二人が実の母子だとは知りませんでした。道理で似てるわけです。スミマセン勉強不足で)。

原作本の方は”泣ける”とか”感動的”等の感想が多いようですが、映画の方はそれ程「感動的」にも「泣ける」ようにも作ってないように思います。ごく自然に、さりげなく心に染み込んでくる、ような。それは随所に笑いを散りばめた松尾スズキによる脚本に拠るところも大きいのかもしれませんが。

しかし、意地悪な見方をさせてもらえばこんな幸福な親子関係なんてそうそうざらにあるものではないと思います。まあ著者の自伝的小説なので描かれていることは基本的に現実に即しているんだと思いますし、母と息子の普遍的な物語ではありますが、やはり「社会的に成功した者」の物語であることを免れ得ないです。だって東京タワーの見える一日4万円の部屋に入院させたり、看病のために広い部屋に引っ越したりなんて誰もが実行できることじゃないでしょ?友人も沢山いて(それもオカンの魅力だったりするんですが)、しかもみんないい奴だし。オトンも憎めない男だし。ホント、人間の美しい面だけを取りあげたような作品です。まあそれ故に心を打たれるのですが。

だからリアルに考えれば夢物語のようで腹も立つんですが、それはひがみであり嫉妬であるわけで、全ての地方上京者にとっては正しく理想的な物語なので、そういう意味では実にイヤラシい作品です。

*監督とのティーチイン付き試写会で観たのですが、松岡錠司監督がこの作品の監督をするようになったいきさつや、撮影中や地元試写での出来事、公開日の4/14がリリー氏の母親の命日の前日にあたる等で「僕がこの映画を選んだというよりも、映画が僕を選んだ」といった意味のことをおっしゃってました。運命かしら。

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