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2006.03.19

3月映画ランキング

『ジャーヘッド』
『かもめ食堂』
『ブラックキス』
『カミュなんて知らない』
『美しき野獣』
『イーオン・フラックス』
『アブノーマル・ビューティ』

トップの『ジャーヘッド』は、自らの湾岸戦争での体験を綴ったベストセラーの映画化作品。戦争が抱える様々な問題を一人の海兵隊員の視線を通して鋭く凝縮した傑作。音楽も最高。
で、その作品の冒頭で主人公が読んでいたのがカミュの「異邦人」なんですが、柳町光男の久々の新作はそのカミュの「異邦人」の主人公よろしく”不条理殺人”を犯した少年をテーマに映画を撮ろうとする今時の大学生達を描いた群像劇『カミュなんて知らない』。“人を殺したらどうなるか実験してみたかった”から人を殺した少年の心理を探るうちに自らも狭い人間関係の中で混乱していく若者達の姿をコミカルに描きつつも、ラストに於けるある”仕掛け”で観る側に様々な解釈を可能にする、という趣向。
ベテラン監督らしく冒頭から緻密に作り込まれた構成は見事の一言。ただ、ほとんど家庭環境が語られることのない登場人物にあって一人だけ過去のトラウマを語るシーンがあるが、それがラストに於いて意味を持ってしまうと思うのだが、その意図が分からない。まあ深読みすればいくらでも深読みできる実にうまくできた重層的な作品ではあるが、それが返ってベテランの”ずるさ”のような気がしてあえてランキングは下げてみました。

柳町監督は10年振りの作品だが、こちらも久々の登場の手塚監督。この『ブラックキス』と『カミュ〜』の共通点は”ラスト10分”『カミュ〜』もそうなのだがラスト10分に怒濤の展開があるのだ!「ヴィジュアリストなんて所詮”自称”でしょ」と思ってましたが、今作では独特の色使い、画質、画像処理etc及びミステリアスなストーリーで高密度の”恐怖”世界を構築してその面目躍如というところか。
しかし、しかしである。あのラスト10分は何なのかと。あれはあれでいいのか?と。確信犯であるのは間違いないのだが、それはパート2を作る、という確信であるはずだ。そうでなければこれは限りなくトンデモ映画に近くなる(それはそれで構わないだけどね)。続編があることを前提とした上での順位としておく。

先月の『あおげば尊し』でも”死体-死”に取り憑かれた少年が出てきたし『ジャーヘッド』『カミュ〜』も”殺人-死”に関わる作品。で、あの『the EYE』のパン・ブラザーズの兄による『アブノーマル・ビューティ』も”死”にまつわるお話。偶然交通事故の現場に居合わせ死体の写真を撮ってしまってから”死”のイメージに取り憑かれてしまうアート系女の子の話。うーん、こちらはかなり即物的なホラー映画だね。何だかハリウッド製ホラーくらいなら自分らでも撮れるぞってだけで作った作品のよう。展開にも犯人にも何の新鮮味も驚きもないし、テーマの掘り下げもなければ映像的にも観るべきところが無い。『the EYE』の秀逸な演出や『テッセラクト』で見せたスタイリッシュな映像美の欠片もないのはどうしたことか?あえて最下位に降りてもらうことで今後の再起を促したい。

『美しき野獣』
『イーオン・フラックス』の共通点は”闘い””復讐”。方や組織暴力-(血は繋がっていないが)弟を殺される。方や独裁政治-妹を殺される。両者ともその恨みが行動の原動力になっている。シャーリーズセロンの美しく柔軟な肢体もいいが、ここはがさつで泥臭いが熱い血潮の感じられる『美しき〜』に軍配を上げておこう。とは言え2作とも他の上位の作品に比べると、完成度の面でもエンターテイメント性に於いても劣るのでありました。

”死”や”殺人”や”暴力”にまつわる作品が多かった反動か、”笑い”を武器に上位に進出してきたのが『かもめ食堂』。『バーバー吉野』や『恋は五、七、五』などで独特な笑いを提供してくれた荻上直子監督のオールフィンランドロケ(日本初!)作品。小林聡美、もたいまさこ、室井滋とくれば「やっぱり猫が好き」だったのだが、ここは室井に代わり片桐はいりという自主映画ならぬ小劇場出身の実力者を起用しての勝負。ゆるいテンポとギャグが笑いのツボを巧みにくすぐる。前2作より(役者のおかげもあるだろうが)確実にコツをつかんできたようだ。観終わったあと無性におにぎりが食べたくなるファンタジーな逸品です。

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2006.03.06

2月映画最終ランキング

『タブロイド』
『ミュンヘン』
『忘れえぬ想い』
『シムソンズ』
『アサルト13/要塞警察』
『クラッシュ』
『あおげば尊し』
『拘束のドローイング9』
『PROMISE』new!
『最終兵器彼女』
『サイレン』
『県庁の星』new!
『ギミー・ヘブン』
『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』

予告編からの期待度はピカイチだった『PROMISE』ですがあえなく討ち死に。絵的な美しさイマジネーション豊かなシーンの数々は評価に値するし、カンフーハッスルのスタッフならではのお笑い系CGもまだ許せるものの、冒頭の「運命」に対するラストの答えがあれじゃあねぇ・・・。せっかく、走るスピードで時空を超えるっていうトンデモ系のアイディアをもってきたのにその使い方は明らかに間違ってるでしょう。それじゃあ何のカタルシスも得られないよん。よって同じように自分の美意識の暴走で作ってても、まだストーリーに一貫性があり、ラストもちゃんと「神話」になってた『拘束の〜』の下になっちゃいました。

予告編からしてかなりヤバイと感じていた『県庁の星』は予定通りの位置でしょうか。全くもってステレオタイプで生活感のない登場人物達に想定の域を決して出ない展開。ぬるま湯に浸かってるような退屈感が漂ってました。それでも最下位にならなかったのは、その下の作品に比べればまだ観客を楽しませようとする意図が感じられる映画になっていたからでしょうかね。

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