といっても既に一ヶ月前ですが。DVDの発売も約一週間後に迫ってきてしまい、ブロガー向け試写会に参加したからにはその感想を書く義務があり、今までそれを怠っていたことにまず反省。
『SOUTHLAND TALES』DVD公式サイト
6/28(土)。会場は赤坂のTBS近くの高層ビルの一室。普段は会議室にでも使われているような部屋でプロジェクターでDVDでの上映。椅子はパイプ椅子で窓には暗幕もなく、決して万全とは言えない鑑賞条件ですが、DVDの発売前に自宅のテレビなんかよりは大きな画面で観れるだけでも感謝。しかもお菓子&ジュース付き。
で、『サウスランド・テイルズ』です。これはもともとかなりな長編として構想されてたもので、映画はいきなり第4章から始まります。なので1〜3章までの話しは映画の冒頭にナレーションや会話の中で少し触れられるだけで、この世界を取り巻く状況や人間関係等を含め、初めて観る人間には何が起こっているのかよく分かりません。そしてそのまま話しはどんどん進んで行きます。
「第三次世界大戦」「ネオ・マルキスト」「永久エネルギー」「流体カルマ」「US認証」「世界の終わり」等々の言葉の周りを、大統領候補やイラク帰還兵、ポルノ女優、アクションスター、テロリスト、マッドサイエンティストたちが右往左往して物語もあっちこっちに転び、“終末”に向かって雪崩れ込んでいきます。正にカオス。しかもネタを放り込み過ぎて消化不良気味。
エキセントリックな登場人物たちに、ポップな音楽&美術、そして飽きさせない展開。どれを取っても前作『ドニー・ダーコ』よりは格段にスケールアップして
います。ただしその分上映時間も長く(145分)、作品の求心力が弱いため、同じ“終末へのカウントダウン”でもそのインパクトが薄れてしまってます。そ
う、テーマ的にはどちらも“終末”に向かっていくお話なんです。構造的にも似ています。終末の始まり。始まりのための終末。『ドニー・ダーコ』は話しがシ
ンプルだった分、ストーリー的には分かりやすくはありましたしね。
何か面白そうな雰囲気はあるんだけど、それぞれの登場人物が何を思って行動しているのか、そして物語がどこに向かって進んでいるのかが分からないので、戸惑いながら観ているうちにクライマックス!!ってな感じですかね。楽しそうな会話に途中から参加したら、話題にに付いていけずに、当人たちは盛り上がってるのに自分一人だけ置いてけぼり、みたいな。
でもそれが魅力的なのも確か。その混沌さがたまらない人にはたまらない。変にこじゃれてスマートでも直ぐに忘れてしまうような作品より、意味が分からなくともボディーブロウのように後になって効いてくるこってり系の作品が好きな向きには最適。
2006年のカンヌ映画祭での不評も、頷けなくはない作品ですが(カンヌバージョンはもっと長かったらしい!)、その分審査員や観客に媚びてないというか、自分のやりたいことを思いっきりやった、というか、監督魂には溢れる作品です。日本では劇場未公開なのでカルト化する可能性も大。
まあ、そういう作品なので(どういう作品じゃ!?)、考えようによってはDVDスルーになったのはよかったのかもしれません。映画館で観て「なんじゃこりゃ?」で興行的にコケるよりは、DVDで何度でも繰り返し観て細部まで楽しむ方が、この作品には合っているのかも。
DVDはカンヌバージョンよりは短くなってるらしく、もっと長いバージョンを是非作りたいとインタビューで言っていたので、こちらとしてもこうなったらディレクターズカット完全版みたいなものを期待しちゃいます。
個人的には既に(試写会当選前に)DVDは予約してしまっているので、ここまできたらよりディープに『サウスランド・テイルズ』を楽しむためにリチャード・ケリー監督が書いたグラフィック・ノベル版の『Southland Tales Book 1〜3』を買って、映画の前の話しを読もうと思ってます。はい。
上記↑のアマゾンでも「2」の商品ページでほんの少しだけ中身が見れます。ちなみに下記の↓サイトでもほんの少しだけコミック版が読めます。
Southland Tales
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